【新企画始動】朕と朕が行く その1 国谷隆志

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朕と朕が行く「自宅で、本棚を前にだらだら2時間」企画

その1 国谷隆志(美術家/京都)

アーティストの本棚って、どうなってるの?

素朴な疑問から立ち上がった「朕と朕が行く」企画。この秋、話題沸騰中の展覧会『アブストラと12人の芸術家』にも出展している、ネオン管を使ったインスタレーションや彫刻作品を発表する美術家・国谷隆志さんの家に、いきなりお邪魔してみた。きっとマンガだって、エロ本だって持ってるよね、と思って、突入するも…!?

国谷:これ(森山大道『PLATFORM』)、古本屋で4,200円ぐらいで買ったけど、ネットで調べたら倍ぐらいで売ってた。僕、古本屋まわるの結構好きなんで。

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——古本屋は、どこが好きですか。

国谷:いつも行ってるのは、だいたい仕事場の近所やから、紫の…

——紫陽書院(京都市左京区一乗寺)! 安いですよね。

国谷:あと、高野のコミックショックにもよく行ってるんですよ。銀閣寺店の方がよかったですけどね。ボードリヤールのこれ(『消滅の技法』)はレアやと思ってるんやけど…。

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国谷:ボードリヤールって写真撮ってて、彼のテキストと写真作品集になってる。

——ボードリヤールの写真ですか。

国谷:これはコミックショックで売っててん。1,000円ぐらいやったんちゃうかな。オビはなかったんやけどね。

——堅そうな装幀からこの中身は想像もつかないですね。

国谷:あと、面白いのでいったら…どっかに…これじゃないな…あ、これ!(ドウス昌代『イサム・ノグチ 宿命の越境者』)、ドウス昌代さんにサインしてもらってん。

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――ドウス昌代さんのお名前、京都のギャラリーの芳名帳で見かけたことあります。

国谷:京都に居らしてたみたいですね。僕が行ってた散髪屋に、昔ドウスさんも来られてたみたいで。この本は、僕のバイブル。めっちゃ読みまくってたからなんやけど、ぼろぼろでしょ? 滋賀近(滋賀県立近代美術館)での『イサム・ノグチ展』に行ったときに持っていって、ドウスさんを見つけてサインしてもらった。

――てっきり古本屋で手に入れたのかと思いました。なかなかの読みこみぶりですね。

国谷:ドウスさんも、「こんなにぼろぼろなるまで読んでくれるのうれしいわ」って言ってくれて、その後、一度手紙もいただいたかな。

――「空間のアーティスト」と書かれてますね。

国谷:イサム・ノグチは図録もけっこう持ってんねんけど、学生の頃から好きなんよね。

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国谷:人の本棚って面白いでしょ。

――それぞれで全然違いますもんね。おっ動物図鑑がありますね。

国谷:あれは(同居している)彼女のもの、自然科学系とかも。僕はあんがい小説とか読まなくて、こんなんばっかり(ズラッと並ぶ思想書を指して)。

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――ん、その一角に『ソラリス』(スタニスワフ・レム)がありますね。

国谷:これはねえ、僕好きなんですよ。映画も見たけど、『ソラリス』のこの不思議な感じが。実は、少し前からちょっと作品で企んでることがあって、で、『ソラリス』読まな、と思ってて。その作品は途中で止まってるんですけど。またいずれひょっとしたら。

――ソラリスつながり…でもきっと作品を見ても、そのつながりはわからないですよね。

国谷:そうやね、でも読んだ人やったらわかるかも。

――でも、確かに小説や物語の本はほぼ見当たらないですね。

国谷:マンガも読むけどね。本棚の奥には『モモ』『鏡の中の鏡』とかも。ミハエル・エンデはけっこう好きだから、探したら出てくるかもしれない。

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――村上春樹も何冊かありますね。

国谷:そうそう、村上春樹も昔、ちょっとだけ読んでみたけど、全然ハマらず…。自分の表現を豊かにするには小説も読まなあかんなと思うねんけど、いつも、ま、いっかと(笑)。

――使う脳みそは全然違いますもんね。

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国谷:図録は、どうしても買ってしまうね。あれどこいったかな…(ドナルド・)ジャッドの銀色の図録で、滋賀近で昔やってたのがあって。あ、これこれ、長いこと手に入らなかったんですよ。

――おっ! 秋山伸デザインですね

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国谷:これは埼玉県立近代美術館で梅津元さんの企画展で、滋賀近に巡回してきたのを見に行ったけど、すでに図録が全部完売してしまっていて。古本屋を探してまわったけど見つからない。それが大阪府立現代美術センターで個展(今日の作家シリーズ48「垂直なる地平:国谷隆志」2007年)をしたときに、尾崎信一郎さん(現・鳥取県立博物館学芸員)にこの図録の話をしてたら、クリスマス頃に、突然封筒が届いて。

――プレゼントだ。

国谷:そうそう、突然送られてきた。

――なんでそんなに人気の図録だったんでしょう?

国谷:やっぱカッコイイから。あと、ジャッドの日本の図録ってそんなにないでしょ。これは大事にしてますね。

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国谷:古本屋でみっけもんだったのは、アグネス・マーティンのこの図録。2,800円位で買ったんかな。ホイットニーでやったときの展覧会の図録なんやけど。ネットで見たら、すごい金額がついてて。

サイン本も結構ありますよ。イリヤ・カバコフのサイン本とか、もうぼろぼろやけど。

――ちなみに、要らなくなった本は売りますか?

国谷:全然売らへんし、あんまり捨てないし。ただ雑誌とかは、処分した方がいいかなと思ったり。マンガは結構売る。場所取るし、僕、マンガって結構何回も読み返すことがないので。集めてしまってからどうしよう、ってなるパターンが多くて。

――国谷さんの家は、マンガがいっぱいあると思ってました。勝手な想像で(笑)。

国谷:実はあんまりなんですよ。あの人(同居人)はマンガに詳しくて。僕はあんまり詳しくないから。

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――数少ないマンガとして『神の雫』がありますよ。

国谷:あれはぼくも全巻読んでる(笑)。

――『カクテルベストセレクション250』も!

国谷:あれは彼女のやねん。

――『サイコ』は?

国谷:あれも彼女の。マンガは売ってもお金にならないしね。場所取るし、いらんなと。

最近、amazonのマーケットプレイスで買ったのはこれ(多木浩二『神話なき世界の芸術家』)。

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国谷:Mさん(平面作品を中心に制作。『アブストラと12人の芸術家』出品作家)が面白いって言うから。あの人はすっごい勉強家やで。でもこの本は絶版で高い。2,500円が定価やけど、5,000円ぐらいしたかな。でも、もうどこにも売ってないから、いいか、と思って。

それと、2冊持ってる本もあるしね。

――あー間違ってしまったダブリ本が。

国谷:いや、わざと。

――わざと? 誰かにあげる用の本ってことですか。

国谷:いやいや、売る用で(笑)。たとえば、『批評空間』の増刊号「モダニズムのハードコア」って、マイケル・フリードの論文が日本語で書かれた本て、これ以外でないねんか。実は10年以上前に1冊持ってたんやけど、引っ越しのときに古本屋に間違えて売ってしまって。その後ずっと探してたら、たまたまコミックショックで1,800円で手に入れてん。

――またもやコミックショック!

国谷:で、もう1冊はあそこ…muzzさん(京都市左京区浄土寺のハイネストビル)の上に、古本屋あるでしょ。あそこで、5,000円やったんですよ。だれか欲しいって人がいたら10,000円ぐらいで売ったろかな、と(笑)。

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――古書価を把握してるのもすごいですね。

国谷:たまにネットで調べる。いいもんみつけたら、これ今、いくらぐらいやろって。

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――ところで、(スラヴォイ・)ジジェクの本がたくさん並んでますね。難解なイメージがありますけども。

国谷:ジジェク好き好き、勉強してる。あと、ボードリヤールもけっこう好き。まあ、でも全部理解してるわけでは全然ないから、まったく分からへんといえば、分からへんのやけど。何となく開いては閉じて、を繰り返してるね。学生の時に読んだやつも多いし。

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国谷:これも古本屋で買ってみたんやけど、東野芳明さんのやつ。でも読まへんかったかな、確か、セラのところだけ、読んだかな。リチャード・セラはけっこう好きやから。

――お、良い色になった新書が出てきました!

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国谷:これは彫刻を勉強し直すときのバイブルやったね。中埜肇『空間と人間』。これに出会ったから、空間のことを研究しようかなと思った。めっちゃ読みこんだもん。

――ほんと、付箋が物語ってますね。

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――『超訳カント』に『超訳ニーチェの言葉』もありますね。

国谷:彼女のやね。超訳系ならもっといいのが……

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国谷:あ、これこれこれ、すごくいいねん。『超訳哲学用語辞典』。めっちゃわかりやすく書かれてるから。哲学書のよくわからん用語とか、人によって使い方の違う言葉について、かなり平たく書いてくれてるから。わかりやすい。

――本の作り方がビジネス書のノリですね。確かにわかりやすい。

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――ちょっと後で直すので、前列の本を全部のけてみてもいいですか?

国谷:全然、いいよいいよ。

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――驚くほど雰囲気が変わりませんね! ブレない。隠してあると思ってたのに、エロ本が。エロ本はどこに隠してるんですか?

国谷:隠してないです、これが全部エロ本なんで(笑)!

――なるほど、これが国谷隆志のエロ本だと。

国谷:でも、本を読んでると、世の中に賢い人が多すぎて…もっと勉強しないとあかんなと思います。

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国谷:峯村敏明さんは昔の多摩美の先生なんやけど、たぶん現代彫刻についてこういう書き方した人っていないと思う。随分お会いしてないけど、すごく昔に、僕の作品も買ってくれました。

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国谷:そう、この河原温のカタログにも峯村(敏明)さんが書いてたはず。この本もめっちゃカッコイイんやけど、河原温が1日中ペインティングを描き続けてる写真があって、途中でめっちゃ面白いのが出てくるんですよ。あれ?どこやったかな…

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国谷:見つけられへんかった、スイマセン。途中でゲームボーイが写ってるんですよ。ゲームやりながら制作してるんやと思ってね。この本はamazonのマーケットプレイスで買いました。

――かなり重たい本ですね。

国谷:開けるとページが崩壊してまうような形態の本やね。まあ、でもカッコイイ。

――この勢いで下段の洋書、図録ゾーンを拝見しますね。

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国谷:やっぱり尾崎信一郎さんが関わってる図録って好きで、『重力ー戦後美術の座標軸』とか『痕跡ー戦後美術における身体と思考』とか、『ミニマル・マキシマム』もすごくいい展覧会やった。このへんの図録は近所の古本屋でもたぶんまだ売ってると思う。

――『ミニマル・マキシマム』には展覧会の入場チケットも挟まれてますね。

国谷:時々そういうのもあるし、ないのもある。

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――図録ってどういうときに見ますか?

国谷:寝る前に眺めたりすることが多いかな。見てたら自分もこんな空間で展示したいとか、たまに興奮してきて寝れなくなることもある。やっぱり彫刻をやってるので、ジャッドみたいに自分の空間を作っちゃうのを見るとね。この『CHINATI』(チナティ)の図録は、大学の助手の子に「これめっちゃいいんですよ」って見せてもらって、でネットで調べて即ポチッと。

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国谷:チナティはまだ行ったことないんですけど、テキサス州にあって、見てたらやばいでしょ、行きたくなってくる。ジャッドの空間もすごくゼータクじゃないですか。(ジョン・)チェンバレンもいいしね。朝か、ここに入ったら最高の気分やろうな。たぶん、暑くなってきて金属が動く感じが音で聞こえると思うんですよ。

――乾いた風景にミニマルアートが映えますね。

国谷:言うたらフェチ空間。彫刻家の醍醐味やと思う。だから、アメリカのアートは面白いなと。まあ、ミニマルアートってもう古いけどね。でもミニマリズムという考え方は今でもすごく面白いと思ってます。

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国谷:ディア・ビーコンは実際に行ったんやけど、ここはもうアーティストの天国やと思った。ニューヨークから電車で1時間くらいかな、はっきり覚えてないけど。マイケル・ハイザーって基本はランドアートの人なんやけど、もう落ちたら死ぬんちゃうかなってくらい深い穴が部屋の中に掘ってあったり。ディアの図録(『Dia:Beacon』)はamazonでも見つけられなくて、ニューヨーク行ったら絶対に買おうと思ってたんやけど、ネットでも見つけられなくて、もう直接行くしかないやんって。広い1部屋にウォーホルだけの展示室とか、ロバート・スミッソンもあった。日本で見られるスミッソンって、国立国際美術館にある斜面にタールを流した作品「グルー・ポア」とかやけど、空間で見られる作品はほとんどないから。ニューヨークに行ったら、ぜひディアは行ってほしい。

――展覧会に行ったら図録は買う方ですか?

国谷:うん。でも正直、後でいらんかったなと思う図録も結構あるけど(笑)。この図録買うんやったら、洋書のでかい作品集を買ったほうがよかったなとか。

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国谷:最近、気に入ってる雑誌はこれ、『PURPLE』かな。

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国谷:恵文社で買うことが多いけど、1冊4千円くらいするんですよ。でも、最新号だとリチャード・プリンスの作品集が付録になってたり、アーティストの仕事の風景も載ってたりで。写真もテリー・リチャードソンが撮ってて、最後にあのいつものエロい顔でニヤッと(笑)。僕もめっちゃ外人好きやし、エロくていい。

たまに、恵文社って古くなった洋書をレジのそばで安売りしてるやん。こないだ、このジャック・ピアソンの図録も安売りしてて。僕は普通に定価で買ってたんやけど、その時、Tくん(京都在住、写真作品を中心に発表。『アブストラと12人の芸術家』出品作家)と一緒にいたから、「Tくん、これ絶対買いやで」って薦めたら、すぐ買いはった。

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国谷:ジャック・ピアソンは写真もかなりいいけど、作品内でネオンサインを入れる箱(チャンネル)をよく使ってるから好きやったんかな。この作品集はしっかりした造本でいいなと。

アーティストのスタジオ写真集(『Artists at Work : Inside the Studios of Today’s Most Celebrated Artists』)もすごく好き。ただ、みんな過剰に掃除してるから、そんなキレイなわけないやろと思うんやけど。ジョン・ケージの家とか、かっこよすぎるし。この本にブライス・マーデンが枝で描いてるシーンがあるんやけど、それもすごくいい。結構、ブライス・マーデンが好きで、自分がめっちゃ金持ちになったら作品を買いたいから。まあ、無理やと思うけど(笑)。

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――ブライス・マーデンはないにしても、部屋には何点かの作品がありますね。

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国谷:その木の箱は(ヨーゼフ・)ボイス。無限定マルチプルらしいんやけど、10年くらい前に買ったもの。梱包も何もなくこのまま裸で渡されたから、バイクの足元に置いて持って帰ってきた(笑)。まあでもアイデア系の作品って、そんな感じでいいかなと思ってる。今入ってるガラスケースは、友だちが日本人形を入れてたのを捨てるって言うから、ちょうどいいわと。

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――棚にもたれかかって立つハンマーはギュンタ・ユッカーの作品。

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――平成16年に出てすぐ買いに行ったというイサム・ノグチの記念切手。

国谷:…そろそろカレーでも食います? とろ味ちゃんとあるかな。

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――同居人が朝から煮込み始めたという豚肉の塊。その肉を見て、仕事場から帰った国谷さんがちゃちゃっとカレーを作ったそう。特大ながらとろとろの豚肉カレー。うまかったです。ごちそうさまでした!

(聞き手:朕T、朕M)

国谷隆志

『アブストラと12人の芸術家』

@大同倉庫(京都市中京区壬生神明町)

2012年11月11日〜12月16日

荒川医、金氏徹平、管かおる、国谷隆志、小泉明郎、立花博司、田中和人、田中秀和、中屋敷智生、南川史門、三宅砂織、八木良太による自主企画展

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